「伝わらないのは当たり前?コミュニケーションの誤解」

コミュニケーションとは?

最近、コミュニケーションに関する講座やセミナーがやたらと目につきます。
まるで「コミュニケーション」が流行語のようですね。

……でも、いつからでしょうか。
こんなにも「コミュニケーション」がもてはやされるようになったのは。

そもそも、私たちは誰かと関わりながら生きています。
「人はコミュニケーションをとらずには生きられない」はずです。
そう思う私は、ひねくれているのでしょうか。

今でこそ、ビジネスコーチや研修講師をしていますが、
私は実は、コミュニケーションが得意ではありませんでした。
何を話していいのか、いつも戸惑っていました。

「できれば話しかけてほしくない」
「“話しかけないでオーラ”を出してしまう……」

こんな声も、よく耳にします。
そして、それを察して話しかけないことも、立派なコミュニケーションの一つですよね。

表情や仕草から相手の意図を読み取ることも含めて、です。


たとえば
「話しかけられたら返さなければならない」
「メールが来たらすぐ返信しなければならない」
そう思ってしまうと、重たく感じませんか?

「面倒くさい……」
「しんどい……もう無理!」

そんな気持ち、湧いてくることもありますよね。

メールを2〜3日放っておいたって、何が悪いのでしょう。
あなたの「〜すべき」「〜であるべき」に、なぜ私がつきあわなければいけないのでしょうか。

ときには、そんな開き直りも必要です。
ただし、リアルの場では――意思表示は、はっきりした方がいいかもしれません。


さて、ここで言う「コミュニケーション」は、
“面と向かってのやりとり”、つまりリアルな関係の中でのことです。

では、相手に一度で自分の意図が伝わるでしょうか?
……いいえ、伝わるかどうかは、相手の反応を見てみないと、わかりません。

あるとき、トレーナー養成の模擬授業で、私はあるテーマについて自分の解釈を説明しました。
受講者は2人。1人は私の意図をほぼ理解してくれましたが、もう1人は、まったく逆の解釈をしていました。

それがわかったのは、実際にその2人が模擬授業を行ったとき。
私の話が、どう受け取られたかが、結果として表れたのです。

つまり、「伝わったかどうか」は、確認しなければ絶対にわからないということです。


では、なぜ人によって解釈がこんなにも違うのでしょうか?

それは、人が情報を「受け取り」「認知し」「解釈し」「記憶する」プロセスで、
無意識に【削除】【歪曲】【一般化】が起こるからです。

環境、状況、そしてそれまでの経験や価値観。
これらによって、私たちは情報を“自分なり”にフィルタリングしてしまうのです。

私自身、仕事の現場で何度もこの失敗を経験してきました。
「きっと伝わっているはず」と確認を怠り、あとで「そんなつもりじゃなかったのに」と頭を抱える……。

繰り返しますが、伝わったかどうかは、確認しなければわからないのです。


もともと日本は「非言語コミュニケーション」の文化です。
奈良・平安時代の貴族社会では、「言わずもがな(=言うまでもないこと)」が美徳でした。

つまり、「察する文化」です。
察することができない人は、教養のない人とされていたのです。

“ふみ(手紙)”でさえ、句読点だけで区切られ、主語も省略される。
これ、現代人にはとってもハードルが高いですよね。

「どこで文が終わるの?」
「どういう意味なの?」

もう、パニックです(笑)。


だからこそ、今の時代に必要なのは――
「相手の地図を尊重すること」です。

自分の考えを押しつけるのではなく、
「あなたのこと、わかってるよ」と、相手に感じてもらうこと。

いくら「傾聴」「承認」と唱えても、
相手の“地図”(=その人なりのものの見方や背景)を尊重しなければ、意味がありません。

……なんて、偉そうに言っていますが。

はい、これらはすべて、私が誰かから学んだ“受け売り”です(笑)。

でも、だからこそ身にしみて思うのです。
「伝える」「伝わる」は、別もの。
その橋渡しには、「相手を知ろうとする姿勢」が必要なのだと。

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元・国土交通省 航空局勤務。 航空保安無線施設の維持管理、工事監督、設計・積算業務を20年以上担当し、現場リーダーとして数多くのチームマネジメントと人材育成に携わる。 その後、航空保安大学校にて教官として後進育成に従事。プロジェクトマネジメント研修をゼロから立ち上げ、現場視点に立った研修スタイルに定評がある。 現在は、「育てるのが苦手な現場リーダー」の支援をテーマに、人材育成・チームビルディング研修・コーチングを実施中。 「理論だけで終わらせない、“使える育成”がモットーです」