今日は「相手の立場で聴くこと」について、少し私の体験を交えてお話しします。
コミュニケーションは、私たちが誰かと関わる以上、避けては通れないもの。
そしてそれは、ときに「伝えたはずなのに、伝わらない」苦しさをともなうこともありますよね。
今日は、そんな“伝わらなかった”経験と、そこから見えてきた大切な気づきをシェアします。
誰かの話を「自分ごと」として聴くということ
自分を愛するように誰かを愛するということは、
自分が聞いてもらいたいように誰かの話を聞き、
自分が理解してもらいたいように誰かを理解することだ。
ー デービット・オークズバーガー
この言葉のとおり、私たちは「自分がされて嬉しいこと」を、
他の誰かにもできたらいいなと思います。
でも現実には——
「人々の共感を妨げる最も大きな障害は、
誰もが “自分と同じだ” と頑なに信じている心だろう。」
―『豊かな人間関係を築く47のステップ』P.28より
…こんな落とし穴があるのです。
娘が「わかってもらえない」と感じた瞬間
今から10年ほど前、
大学の実習で心が折れそうになっていた娘が、私の元にやってきました。
「私だけができない…」
「私だけが落ちこぼれ…」
そう思い詰めて、泣きそうな声で私に問いかけてきたのです。
「どうしたらいいの?」
私は精一杯、励ましの言葉をかけました。
「教授も同じことを言っていたよ」とも伝えました。
でも彼女はこう返しました。
「教授には相談できない。友達にも言えない」
「わかってくれない!教授もタッタ(私)も“できる人”だから…」
フィルター越しに見えていた世界
このとき娘の心の中には、あるフィルターがかかっていました。
「私はできない人」
「教授やタッタは“できる人”」
「だから、できる人のアドバイスを聞いても、自分にはできない」
…という思い込みのフィルターです。
どれだけ愛をこめて伝えても、
その言葉はフィルターに遮られてしまうのですね。
彼女が本当に求めていたのは、
「ただ聴いてほしい」だけでなく、
「わかってほしい」
そして、
「なんとかしたい!」という強い想いだったのです。
“共感”がもたらした変化
そんな娘が次にとった行動は、
**「友達にメールをする」**という、シンプルな一歩でした。
すると、すぐに電話がかかってきて——
友達も同じように苦しんでいたこと、
そして、実際にどう乗り越えたかという「対処法」まで教えてもらえたのです。
それをきっかけに、娘は教授にも相談できるようになり、
実習にも前向きに取り組めるようになりました。
“わかってもらえる”と、人は行動できる
「なんとかしたい」という気持ちが、
彼女を一歩踏み出させたのです。
でもその前に必要だったのは、
「わかってもらえた」と感じる“共感”だったのかもしれません。
相手のマップを尊重するということ
相手のことを本当に理解しようとするには、
その人が見ている「地図(マップ)」を尊重することが大切です。
私たち一人ひとり、感じ方も、捉え方も、心の風景も違います。
「わかってもらえた」と感じてもらえる関わりを、
日頃から心がけていきたいですね。
私自身、これからも人のマップを尊重しながら、
あたたかな関係性を築いていきたいと思います。