その人がやってくるだけで、まるでその場に光がともるような人。
その人がいるだけで、なぜか嬉しくなってしまう──そんな優しさで光輝いている人が、この世には確かに存在します。
――ヘンリー・ウォード・ビーチャー(奴隷制度廃止を推進したアメリカの牧師)
■「褒めて育てる」──信じることから始まる関わり
「一生懸命練習していて感心だね。君は絶対、いい選手になるよ」
スポーツ指導や子育てにおいても、「間違いを正す」前に「認めて信じる」ことから始める。
それは今も変わらない、私が大切にしている関わり方です。
相手の良いところにまず光を当てること。
その上で、「ここをこう変えてみたらどうかな?」と丁寧に伝える。
その一言が、相手の自己肯定感をそっと押し上げていきます。
■小さな思い出──怒る前に“背景”を感じる心を
私の息子がまだ幼かった頃のこと。
机に向かっていると、膝に乗ってきては私の真似をして遊ぶ日々。
ある日、本に赤や青のペンでぐちゃぐちゃと落書きがされていました。
「なんてことを…!」と叱りかけたその時、ふと気づいたのです。
彼は、私が本に線を引いているのを見ていたんですね。
きっと「たったのお手伝いがしたい」と思って、彼なりに一生懸命やったのでしょう。
その気持ちに気づかずに怒ってしまった場面──
実は、子育て中にはたくさんありました。
「叱る」というより、「怒っていた」んだなぁ…と、今ならわかります。
■人は皆、自分を励ましてくれる人を求めている
誰もが、自分のことを“そのままで価値がある”と思わせてくれる存在を求めている。
他人の欠点や過ちを指摘する人は、掃いて捨てるほどいる。
でも、相手の中にある可能性を、本人以上に信じてくれる人こそ、
本当に必要とされているのだ。
――グレン・ヴァン・エカレン『豊かな人間関係を築く47のステップ』
■「あなたといると、自分のことが好きになる」
この言葉に、私は人生の方向性を見出しました。
コーチとして、そう言ってもらえるような関わり方をしたい。
そう思ったのが、ちょうど10年前。
- どうしたら、もっと人の力になれるだろうか
- どうしたら、より信頼される対話ができるだろうか
- どうしたら、相手の“心の灯り”をともす存在でいられるだろうか
そんな問いを抱えながら、ここまで歩んできました。
■そして、今の私は──
10年前の私が目指していた姿に、少しでも近づけているでしょうか。
未熟な部分はまだまだある。
でも、今でも胸の奥に灯っているのは、
「その人の可能性を、その人以上に信じる」
「相手の自尊心が高まるような関わりをする」
──その決意です。
だから私はこれからも、
誰かの中に眠る“やさしさ”や“自信”に光を当てる存在でありたいと思います。
☘️あとがき
子育て中、私は普通に怒っていました。
ちゃんと理由も聞かずにイライラをぶつけてしまったことも、一度や二度ではありません。
「こうありたい」と思いながらも、できなかったこと。
「信じてあげたい」と思いながら、うまく関われなかったこと。
そんな“反省”と“後悔”も、私のコーチングの土台になっています。
それでも──
誰かの力になりたいと思う気持ちだけは、ずっと変わっていません。
10年前、「私はあなたといると、自分のことが好きになる」と言ってもらえるような存在を目指したあの日の想いを、
今も心のすみにそっと置いて、私は今を生きています。