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人間関係で疲れたときに立ち止まる話

人から受け取った言葉を、どう受け取るか——

言葉が届かなかったとき、
それは失敗ではなく、
相手の気持ちに触れかけた合図なのかもしれません。

言われた瞬間は流せたのに、
ふとしたときに思い出して、
「……あれ、なんだったんだろう」と考えてしまう。

そんな言葉が、誰にでも一つや二つ、あるもの。


たとえば、
あなたが「よかれと思って」伝えた一言なのに、
相手の感情が、思いがけず爆発してしまった——
そんな経験はありませんか。

「あなたのことを思って言うんだけど……」

この枕詞。
一見やさしく聞こえますが、
実はとても危うい言葉でもあります。

なぜなら、この言葉を口にした瞬間、
話の主語が、いつの間にか
「あなた」から「私」へすり替わってしまうことが多いからです。

・私はこう思った
・私はこうしたほうがいいと思った
・私は正しいことを言っているつもりだった

気づけば、
「あなたのため」ではなく、
「私の正しさ」を伝えていただけ——
そんなすれ違いが、起きてしまうのです。


先日、コミュニケーション講座の中で、
私は受講生さんに、こんなお話をしました。

「もし相手から、
『あなたにアドバイスなんて求めていない!』
『ただ、話を聞いてほしかっただけ……』
と言われたら、どう感じますか?」

同じように、相手は口に出さずとも、

『あなたにアドバイスなんて求めていない!』
『ただ、話を聞いてほしかっただけ……』

心の中で、つぶやきながら・・・、

「そうじゃなくて、・・・もういい・・・。」

と言われたら?

少し間があって、
こうおっしゃいました。

「……それは、ちょっとショックですね」

無理もありません。
「良かれと思って」関わったのに、
拒まれたように感じてしまうからです。

でも、ここにこそ、
人の気持ちの本音が、はっきりと表れています。


人はいつも、
「答え」や「解決策」を求めて話しているわけではありません。

ただ——
・気持ちをわかってほしかった
・否定せずに受け止めてほしかった
・ひとりじゃないと感じたかった

それだけ、ということも多いのです。

そんなときに必要なのは、
立派なアドバイスでも、
完璧な言葉でもありません。

ただ、
「うんうん」とうなずきながら、
相手の話をそのまま受け取ること。

それだけで、
張りつめていた心が、
ふっと緩む瞬間があります。


ここまで書いておいて、
少し正直に言うと——

これは「伝える側」の話でありながら、
裏返してみると、
「受け取る側の気持ち」も、とてもよく見えてきます。

人は、
アドバイスを拒んでいるのではなく、
「今はそれじゃない」と伝えているだけ。

そう思えると、
言葉の衝突も、
ほんの少しだけ、やさしく見えてきませんか。


……ムフフ。
こういうところに気づいてしまうあたり、
やはり私は、ちょっと腹黒さんなのかもしれません。

でも、
その腹黒さのおかげで、
人の心の奥にある「本当の声」に、
今日も出会えています。

言葉は、
投げるものでも、ぶつけるものでもなく、
受け取るもの。

そう思えるだけで、
人との関係は、
少しずつ、楽になっていく気がします。


もしこの文章を読んで、
「私も、つい正しさを渡そうとしていたかも」
「聞いてほしかっただけの気持ち、あったな」
そんな思いが浮かんだなら——

それは、
自分を責めるサインではなく、
人を大切にしたい気持ちがある証なのだと思います。

今日は、
言葉をどう使うかよりも、
言葉をどう受け取るかを、
少しだけ大切にしてみませんか。

届かなかった言葉の奥には、
本当は「わかってほしかった気持ち」だけが、
静かに残っていることもあります。

もし今日の話が、
少しだけ心に残ったなら——
その続きを、静かに考える時間もあります。
▶ 人生棚卸し(少人数・対話形式)