私の学生時代、ドイツ語の試験は辞書持ち込み可でした。東北大学の学生にこの話をしたら、外国語の試験は何でも持ち込み可だったので、ネイティブスピーカーを連れきた学生がいたそうです。また、私の先輩は、「カンニングペーパー」を必死で作成している間に内容を覚えてしまい、結局カンニングペーパーは使わず仕舞い。
大阪大学の場合はどうだったのでしょう。
大阪大学で、2005年から10年以上続いた伝説の講義
講義を担当したのは、法学者の谷口真由美氏です。谷口氏は、「日本国憲法」の講義であるユニークな施策をしていました。試験の際、カンニングペーパーの持ち込みを許可したのす。それは、「A4の用紙1枚になんでも書いてきてよし」というものでした。
「カンニングペーパー持ち込み可」は学生たちにはどんな反響があったか
カンニングペーパーを「持ち込み可」にしたのは、学生に講義の要点をレビューし、まとめさせるためでした。できあがったカンニングペーパーはそれぞれの頭の中を見事に映していました。さながら「小宇宙」のように。ちなみに、大阪大の「裏シラバス」ともいうべきクロバスの、谷口氏の授業のところには「カンペ持ち込み可」と書いてあります。
発想は、大学時代の「カンニング野郎Aチーム」
谷口氏の大学時代,「カンニング野郎Aチーム」というグループを組織していた友人がいました。単語にヤマをかけ、カンニングペーパーを作成し、出来上がったものを確認しているうちに、すっかりそれらの単語を覚えてしまっているのです。「ヤマをかける」という作業も、試験範囲をレビューし、要点をかいつまむ点で復習になります。
「ちっちゃいところにまとめる」のはポイントをかいつまむ作業
法学系の試験では『六法』持ち込み可がふつうなのですが、明らかにカンペをはさんでいる学生がいました。それだったら学生に、教える側が強調したポイントをあらかじめ小さな紙にまとめさせて、持ち込ませるのがいいのでは、と思うようになったのです。「なんでも持ち込み可」にすると、弁護士とか法学者のお父さんを連れてこられたら困るなあ、と気づいて「A4のカンペ」1本にしました。
試験の範囲、テーマは
講義の試験範囲は、「やったところからやったところまで。やっていないところからは、出しません」という、あるようなないようなものです。答案用紙では「理解していること」を証明するように周知していたので、カンペ作りも大仕事だったはずです。
わかっているところは重要であっても「書かない」
卒業生と話す機会があったのですが、「授業を聴いて自分が理解できたところはあえてカンニングペーパーに入れない、用語とか、覚えきれないところを重点的に書きました」と言っていました。その卒業生のやり方は、まさに「真」だったと思います。
実際に、「ポイントだけ」を書ける学生がいい答案を作成していた印象です。これは、仕事でプレゼンテーションをする際に「あんちょこ」を作るときにも、役に立つ極意だと思います。カンペを持ってこなかった子に聞くと理由は3パターン、作ったけど持ってくるのを忘れた、 作ったが、作った時点でもう必要なくなったので持ち込んでいない、作らなかった、でした。当然、2番目の学生の答案が本当にすばらしかった。
省くもの、残すべきものを見誤らなければ、学問やビジネスその他も、だいたいうまくいくように思えます。
(参考サイト)
阪大のカンニングペーパーがすごい。成功に必要なのは「要約」だった
https://forbesjapan.com/articles/detail/44538
佐藤好彦
最新記事 by 佐藤好彦 (全て見る)
- 日本のデジタル力が振るわないのは“数学嫌いの大人”が増えたからなのか - 2022年2月13日
- 英語力「112カ国中78位」の日本、すすむ外国人の日本の離れ - 2022年2月11日
- カンニングペーパーとビジネスで成功する要約力の関係 - 2022年2月6日